成分名:ペントバルビタールナトリウム

 

(規制) 要指示薬、向精神薬

 

 

(商品名)

注射剤:ソムノペンチル

 

 

(用法・用量)

 

 ペントバルビタールナトリウムとして下記量を静脈内注射、腹腔内注射、筋肉注射するが、患畜の健康状態・麻酔状態に応じて用量を増減する。静脈内注射に際しては、まず全投与量の1/2を比較的急速に、残量をやや緩徐に麻酔状態を十分に観察しながら注射する。

1.

 鎮静には体重1kgあたりペントバルビタールナトリウムとして24mgを、全身麻酔 (外科的深麻酔) には、体重1kgあたり2025mg静脈内注射する。

2.

 鎮静には、体重1kgあたり6mgを、全身麻酔には、体重1kg当たり710mgを静脈内注射する。

3. 緬・山羊

 全身麻酔には、体重1kg当たり、2025mg静脈内注射する。

4.

 全身麻酔には、静脈内注射の場合、体重50kg以下の豚で体重1kg当たり2430mgを、体重100kg以上の豚で体重1kgあたり、1020mgを投与する。腹腔内注射の場合、50kg以下の豚で体重1kgあたり、2030mgを投与する。基礎麻酔には、腹腔内注射で体重1kg当たり25mgを投与する。

5.

1) 静脈内注射

 全身麻酔には、体重1kg当たり2030mg、一般に体重1kg当たり25mgを投与する。注入法としては、まず全投与量の1/2を呼吸状態をよく注意しながら、20 (小型犬) 1 (大型犬) で注入する。次いで1分間の休止をおいて残量を24分間で注入する。または全量を13分間で等速に注入する。深麻酔への導入は円滑であり、30100分間深麻酔が得られ、その後28時間の嗜眠・鎮静が続く。

2) 腹腔内注射

 全身麻酔には、体重1kg当たり30200mgを投与する。注入525分後に3090分間持続する深麻酔と28時間の嗜眠・鎮静状態が得られる。

3) 筋肉内注射

 全身麻酔には、体重1kg当たり3035mgを投与する。100150分間深麻酔が得られる。

4) 追加麻酔

 初回投与量の1/2量以内を投与する。

5) 鎮痙にはその症状に応じ1頭当たり2530mg1回あるいは分割投与する。

6.

1) 静脈内注射

 全身麻酔には、体重1kg当たり2535mgを投与する。100150分間の深麻酔が得られる。その後36時間の嗜眠・鎮静状態が続く。

2) 腹腔内注射

 全身麻酔には、体重1kg当たり2535mgを投与する。注入1020分後には深麻酔が得られ、1050分間持続する。

7. ミンク

 全身麻酔には体重1kg当たり3040mgを腹腔内注射する。1040分間の中・深麻酔が得られる。

 

 

(使用上の注意)  詳細は、各社の使用説明書を参照のこと。

 

対象動物に対する注意

制限事項

1. 本剤の麻酔による呼吸抑制・停止や血圧下降等の症状が見られた時は、人工呼吸と補液、保温が適切な処置である。呼吸興奮剤の投与に当たっては、頻回投与を避けること。

2. 投与量の計算にあたっては、患畜の年齢・健康状態 (特に肝機能障害、循環機能障害) を十分考慮し、幼老動物、肥満した動物には本剤の量を減らすこと。

3. 冬期などで環境温度が低い場合、体温保持のために保温が必要である。

4. 本剤を妊娠動物に使用した場合、胎児へ移行し死流産等を起こすことがあるので使用しないこと。

5. 解剖学的に呼吸困難を起こし易い短頭犬種等では、麻酔中に注意深い管理が必要である。

副作用

・本剤が血管外にもれると、局所に疼痛・腫脹を起こすことがあるが、このような場合は冷湿布により消退する。

相互作用

・他の薬物との併用によって作用が増強されることがあるので減量が必要になることがある。

適用上の注意

1. 本剤投与前に624時間絶食させることが望ましい。

2. 腹腔内注射を行う場合、膀胱が空であることが必要である。

 

 

(休薬期間:使用禁止期間)

 

休薬期間:本剤投与後、下記の期間は食用に給する目的で出荷等を行わないこと。

牛、馬、緬・山羊、豚:10日間   牛乳:24時間

 

 

「副作用」

 

・概論

 ペントバルビタールナトリウムは筋肉内注射、腹腔内注射、静脈内注射などの投与経路があるが、前二者は薬用量および麻酔効果に個体差が著しく不確実なので、通常は静脈内に投与する。一般に標準用量で呼吸停止が起こることは滅多にないが、注入速度が速すぎたり、呼吸器や肝臓に重度の障害がある場合、ならびに著しい肥満の場合などに時折りみられることがある。麻酔の経過中には体温が降下するので特に冬期は術後の保温に留意する必要がある。術後は暖かい部屋で冷えないように管理することで十分な場合が多い。1)

 

1.

1) 家畜衛生週報・動物用医薬品副作用情報

副作用及び症状

発生数

転  帰

治癒

死亡

不明

記載なし

呼吸停止

1

 

1

 

 

 

2.

1) 静脈内投与により (2030mg/kg117) 1例に肝に障害がみられ、これが死亡の一因とされた。2)

2) 家畜衛生週報・動物用医薬品副作用情報

副作用及び症状

発生数

転  帰

治癒

死亡

不明

記載なし

呼吸停止

3

 

2

 

1

不覚醒

1

 

 

1

 

不整脈

1

 

1

 

 

呼吸・心臓機能停止

1

 

 

1

 

間代性痙攣

1

 

 

 

1

心悸亢進、呼吸不規則

1

 

 

1

 

 

3.

 新生子猫 (110日齢) への全身麻酔の投与量の算出は非常に困難である。3)

 

 相互作用

1) 飲酒又は次の薬剤により、相互に作用が増強されることがあるので、このような場合には、減量するなど慎重に投与すること。抗不安薬、抗精神薬、催眠鎮静薬、抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、チアジド系薬物、ジスルフィラム、解熱鎮痛剤、クラーレ様物質、抗パーキンソン薬

2) クマリン系抗凝血薬に影響を与えるので、本剤を効クマリン系抗凝血薬治療下にある患者に投与する場合には、通常より頻回にプロトロンビン値の測定を行い、クマリン系抗凝血薬の量を調整すること。4)

 

 

[安全性]

 

1.

 牛に外科麻酔量の3倍量 (33mg/kg) の急速静注が致命的であるとの報告がある。5)

2. 山羊

 子山羊の1回静注量 (50mg/kg) が致死量であったとの報告がある。6)

3.

 帝王切開に本剤を使用し、呼吸麻痺を考慮した用量を用いて胎児に影響がなく手術に成功したとの報告がある。7)

4.

 麻酔時間はクロラムフェニコールによって延長されたとの報告がある。8) 5%液を腹腔内に投与 (30mg/kg14) したところ、80mg/kg投与1例は16分後、100mg/kg投与1例は15分後いずれも死亡した。2)

5.

 妊娠猫への応用例で、妊娠前期、後期においても死流産したとの報告がある。9)

6. ミンク

 軽麻酔100%有効量は50mg/kgであるが、この用量では16頭中の1頭が死亡している。本剤について実用性があるとする報告があるが、腹腔内投与で深麻酔ED100LD5070mg/kgであり、安全性の点で投与量決定に難点があることも同時に示唆している。10)

 

 

[残留性]

 

 5頭のポニーに7回実験し、5mg/kgのペントバルビタールを投与したとき、尿中に出現する5-エチル-5-(3-ヒドロキシ-1-メチルブチル) バルビツール酸の比率は33±7%であった。経時的な代謝物質の総排泄率は5時間で50%、10時間で80%、15時間で95%に達し、21時間で排泄する。10)

 

 

[非臨床試験]

 

1. 急性毒性  致死量 (LD50 MLD or RADCLDmg/kg)

  

投与経路

LD50

MLD* or RAD**

CLD***

ラット

  

129.0280.2

 

 

  

65.080.5

50.0

 

腹腔内

75.0

80.0

 

マウス

腹腔内

140.0

70.0

 

  

 

175.0

 

ウサギ

  

33.0

53.3 ± 8.5

403 ± 82.6

  

  

 

50.055.0

170.6 ± 13.7

  

  

 

53.5

 

   *: Minimum Lethal Dose **: Respiratory Arrest Dose ***: Cardiac Lethal Dose

 

2. 急性中毒症状

 中毒死を起こす際の症状は、呼吸浅く遅く、低酸素血症が進むにつれて瞳孔は散大、脈拍は弱く疾速となる。反射機能は消失し、皮温低下により皮膚は冷たく、粘膜はチアノーゼを呈し死に至る。致死量の静注速度を早くすると、中枢の局所濃度が急激に上昇するため、突然呼吸停止するが、その後無酸素血症となるまで、暫時心筋活動は続けられる。一般に中毒死の際の呼吸停止は投与後1015分であるが、漸進的抑制をする。12)

 

 

[出典]

 

1)  獣医麻酔研究会 (1976) 獣医麻酔ハンドブック、103-104

2)  幡谷正明 (1955) 日獣会誌、8(5)220-224

3)  R.F.Sis (1972) Lab.Anim.Scie.22(5)746-747

4)  日本薬局方 医薬品情報集(1991)(薬業時報社)

5)  L.W.Groves (1951) J.A.V.M.A.119;50-54

6)  津田恒之ら (1956) 日獣会誌、9333-338

7)  田中穂積 (1977) 九州獣医学会

8)  H.R.Adams et al (1970) J.A.V.M.A.156(7);902-905

9)  前川博司 (1956) 日獣会誌、9(6)286-288

10) D.L.Graham et al (1967) Am.J.Vet.Reo.,28(122),293-296

11) J.D.Nicholson (1968) Biochem.Pharm.,17,1-8

12) N.H.Booth (1965) Jones,Vet.Pharmacol. & Therap.3rd Ed.,153-163